【横浜 離婚】婚姻費用減額に関する裁判例のご紹介

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により生活・社会環境が変化したことで、今後、婚姻費用や養育費の増減額請求が増えていくのではないかと思われます。

しかし、このような事案で感染拡大の影響が法的にどのように考慮されるかは、裁判例の集積を待たなければならない部分もあると思います。

 

そこで今回は、さしあたり新型コロナウイルスの感染拡大とは関係なく、夫(義務者)の退職・収入減少を婚姻費用減額請求手続においてどのように考慮するかが問題となった、最近の裁判例をご紹介します。

 

<事案の概要>

①前  提

「夫は妻に対し月額6万円の婚姻費用を支払え」という内容の審判(前件審判)がなされ、確定しました。

②平成30年10月

夫が、平成30年4月ころから抑うつ状態になり、同年10月に退職したことを理由に婚姻費用減額調停の申し立てをします。

③平成31年3月

調停が不成立となり、審判へ移行します。

 

<原審(神戸家庭裁判所尼崎支部令和元年10月30日審判)>

原審は、夫が再就職できたとしても、その年齢(当時40歳または41歳)や精神状況、求職活動等の状況からすると、元の審判当時の同程度の収入が直ちに得られるとは認められず、前件審判が定めた婚姻費用分担額を維持することが実情に適さなくなったとして、事情変更があると認め、夫の収入を前件審判時の約60%と認定して婚姻費用月額を3万円と算定し、従来の月額6万円から3万円の減額を認めました。

妻側がこの審判を不服として即時抗告します。

 

<抗告審(大阪高等裁判所令和2年2月20日決定)>

抗告審である大阪高裁は、原審と異なり、

・夫は、抑うつ状態になったとする平成30年4月ころ以降も稼働を継続して、平成30年10月に退職するまで前件審判時と遜色ない収入を得ていたこと

・退職も自主的な退職であったこと

・夫は、調停申立て前の平成30年9月及び審判移行後の令和元年5月にそれぞれ医師の診断書作成を依頼しているものの、いずれの診断書も具体的な症状が全く記載されていない上、令和元年8月以降は受診も服薬もしていないこと

・夫は自主退職後も散発的に稼働を継続して収入を得る傍ら、平成31年春頃には第一種衛生管理者の免許等を取得し、令和元年秋ころには大学(通信教育課程)の入学試験に合格し、令和2年4月に入学する予定で、入学金および20万円もの学費を納入していること

 

といった事情から、夫は抑うつ状態のため就労困難であるとは認められず退職後も現在まで前件審判当時と同程度の収入を得る稼働能力を有しているとして、精神状態や退職による収入の減少は婚姻費用分担金の額を変更すべき事情の変更は認められない、としました。

 

この裁判例から、婚姻費用増減額手続における事情変更の判断においては、表面的な収入の減少ではなく、実質的な稼働能力の減退の有無・程度を問題とし、その検討にあたっては、多様な周辺事情を紡ぎつつ総合評価をしていることがうかがえます。

 

また、抑うつ状態に関する医師の診断書についても、診断書作成の時期が調停・審判といった手続の要所で行われていること、診断書の内容も、具体的な症状が全く記載されておらず、どの程度就労が制限され、どのような形態であれば就労可能であるのか明らかでないこと、令和元年5月に診断書作成後、同年8月以降は受診も服薬もしていないこと、から、診断書は、夫が裁判手続上自己に有利な資料として提出するために依頼し、医師も夫の主訴に基づいて作成したと推認される、とするなど、診断書の内容に依拠しませんでした。

 

 

以上から、このような事案では、収入資料一本、精神科医の診断書一本のみでは事情変更を決定づけることができず、実質的な稼働能力の減退という目に見えない、簡単に数値化できないものについて、周辺事情をいかに収集し有機的に主張できるかが勝負のように思います。

養育費の手続でも同じことが言えるでしょう。

 

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