祖父母が、孫について、家庭裁判所に対して、面会交流をすることを求めることができるか?
以前、祖母の方がお孫さんの監護権者になることができるかという記事をアップしています(※リンク)が、今回は、祖父母の方に、お孫さんとの面会交流を裁判所に求めることができるか、という問題について判断した最高裁判例(令和3年3月29日決定。監護者指定の最高裁の決定と同一日ですが、別事案です。)をご紹介します。
この決定から判る事案の内容は以下のとおりです。
・Yは、平成24年にAと婚姻し、平成28年、Aとの間に子をもうけます。
・父Yは、母Aと子、Aの両親Xら(子の祖父母)とXらの自宅で同居していましたが、平成29年1月ころ、YがXら宅を出て別居するようになります。
・父Yと母Aは、平成29年3月以降、一定期間ごとの交替で子を監護し、Xら(祖父母)は、Aによる監護を補助していました。
・ところが、母Aが、平成30年6月に死亡し、以後は、父Yが子を監護してきました。
・このような事情の下で、子の祖父母であるXらが、子との面会交流を求めて家庭裁判所に申立てをしました。
この事案について、最高裁は、監護者指定の審判の事案と同様に、父母以外の方の申立権の存在自体を否定、つまり、そもそも、子の父母以外の第三者は、家庭裁判所に対して面会交流を求める権利(申立権)がないと判断しました。
理由も、やはり監護者指定の審判と同一で、
・民法上、父母が協議上の離婚をするときは、子の監護について必要な事項(監護者を誰にするか、面会交流をどうするかという事項も含まれます。)は、父母が協議をして定めると規定され、その協議が調わないときは、家庭裁判所が定めると規定されていることからすれば、協議が調わないときも、協議の主体である父母の申立てにより、家庭裁判所が定めることを予定している(つまり、父母以外の第三者の申立てによることを予定していない。)。
・民法その他の法令において、事実上子を監護してきた第三者(①の事案では祖母、②の事案では祖父母。)が、家庭裁判所にこの監護について必要な事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく、監護の事実をもって、その第三者を父母と同視することもできない。
・子の利益は、子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないが、このことは、第三者からの申立てを許容する根拠となるものではない。
としました。
事実上の監護によって祖父母の方とお孫さんとが密接な関係となることがあり、その場合には、祖父母の方に監護者の指定や面会交流を求める申立権を認める必要性はあると思われますが、現行法上、これを許容する法的根拠がないという判断から、上記の結論となりました。
筆者としては、たしかに、現行法上の解釈としては第三者の申立権は許容できないとの判断でやむを得ないと考えます。
しかし、父母以外でも、事実上子を監護してきた第三者が、父母と同視できるような強い信頼関係を有するに至ったのであれば、第三者による監護や面会交流を認めることが子の福祉にかなうと考えうる余地は十分にあると考えられます(実際上記の裁判手続においても、原審等は最高裁と異なる判断をしたようです。)。
いかがだったでしょうか。
今回の最高裁決定は、当事者の祖父母の方にとっては身が切られるような内容だったかもしれません。
具体的な経緯に照らして祖父母の方とお孫さんとの関係を維持する、それを法が後押しすべき事案もあると思いますから、今後の立法的な議論を注視したいと思います。
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