民法改正~第6回~

2019年4月15日

 今回で第6回目となる民法改正に関する記事です。前回に引き続き,主な改正点について説明したいと思います。

 

「代理人の行為能力」

(1) 意思能力が無い者のした法律行為が無効であることは,前回の「民法改正について~第5回~」(https://y-yotsuba.com/civil-code/post-1929/)で触れました。この意思能力とは別の概念として,行為能力があります。行為能力とは,独立して有効に法律行為を行うことのできる能力,と定義されます。

 この点,意思能力の有無は個別事案ごとの判断であり,行為当時に意思能力がなかったことは,そのことを主張する者が立証しなければなりませんが,必ずしもそれは簡単なことでありません。相手方にとっても,後に無効とされる可能性があり,取引の安全が害される結果となりかねません。そこで,あらかじめ判断能力が不十分な者の類型を定めておくことで,その類型に該当する者(制限行為能力者)の法律行為を否定(取消可能と)するのが行為能力制度です。これにより,判断能力が不十分な者の保護とともに取引の安全を図ることが狙いです。具体的には,未成年者,成年被後見人,被保佐人,同意権付与の審判を受けた被補助人が制限行為能力者とされています。

 

(2) もっとも,制限行為能力者であっても,他人の代理人になることはできます。そして,現行民法では,制限行為能力者が代理人としてなした行為は,それが制限行為能力者によるものであることを理由に取り消すことができません(現行民法102条)。これは代理行為の効果が代理人自身には帰属しないこと,本人(代理行為の効果が帰属する者)があえて制限行為能力者を代理人に選任している以上,制限行為能力を理由に取消を認める必要はないこと,が理由とされていました。

 しかし,本人もまた制限行為能力者で,その法定代理人が制限行為能力者である場合については,本人自ら法定代理人を選任しているわけではないことから,本人の保護を十分に図る必要があります。そこで,改正民法では,原則として,制限行為能力者の代理行為は取り消せないが,例外として,「制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為」について取消を認めています。また,この場合には,本人である「他の制限行為能力者」にも取消権が認められるようになります。

 

 今回はここまでです。また次回の連載記事で,他の改正点についても説明をしたいと思います。

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2019年4月15日民法改正