【横浜 相続】弁護士を遺言執行者に指定するメリットとは?
遺言執行者とは?
遺言執行者とは,遺言の内容を実現するための手続を行う役割を与えられた者です。
遺言執行者を指定するか否かは,遺言者が決めることができます。全ての遺言において遺言執行者を指定する必要はありませんが,指定しない場合は,遺産である預貯金を名義変更・解約することや不動産を処分して換価するには,相続人全員で手続を行う必要がありますので,手続が円滑に進まないこともあり得ます。
遺言執行者を指定するとした場合は,相続人の一人であったり,信託銀行等の金融機関であったり,弁護士等の専門家を指定することが考えられます。
弁護士を遺言執行者に指定することのメリット
弁護士を遺言執行者に指定する場合は,報酬が発生するのが通常です。それでも,弁護士を遺言執行者に指定する場合,以下のようなメリットがあります。
1 預貯金の解約や不動産の名義変更の手続は,慣れていないとそれ自体が大変であると思われます。更には,遺言の内容が複雑だとか,対象となる財産が多岐にわたる場合,相続人が多数おり各々に相続させるような場合には,遺言執行が完了するまでに長期間を要してしまうこともあります。そうなると,なかなか遺産を得られない相続人から非難を受けてしまうことも考えられます。そうなってしまうと,せっかく相続人間の紛争を回避するために遺言を作成したとしても,その意義を失わせることになりかねません。
そのような場合に,弁護士を遺言執行者に指定しておけば円滑に手続を進めることが可能です。
2 遺言がある場合でも,相続人全員で合意すれば遺言と異なる遺産分割をすることが可能です。相続人全員が納得しているのであれば問題ないとも言えますが,相続人間の力関係によっては,意に沿わないまま遺言と異なる遺産分割に合意してしまうことも考えられます。そこまで行かなくても,遺言執行の過程で遺言に不満を持つ相続人との間で紛争になってしまう可能性もあります。
これでは,やはり遺言の意義を失わせることになりかねることになってしまいます。このような場合にも,遺言内容を確実に実現するため,弁護士を遺言執行者に指定しておくことが有用と言えます。
遺言執行者の権利義務
具体的に,遺言執行者には,どのような権利義務があるのでしょうか。この点,「遺言執行者は,遺言の内容を実現するため,相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」とされており(民法1012条1項),遺言を実現するため広範な権限を有します。他方で,受任者として種々の義務を負うことになっています(同条3項)。
2019年7月1日から施行されている改正民法(相続法分野)では,以下のとおりに遺言執行者の権限・義務が明確化されています。更に,遺言執行者の行為の効果が直接相続人に帰属することが明文化されています(同法1015条)。
1 遺贈の履行(同法1012条2項)
遺言執行者が指定されている場合,遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができるとされました。
2 対抗要件具備(同法1014条2項)
改正民法では,ある相続人が遺言等によって承継した権利の相続分を超える部分については対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないとされています(同法899条の2)。そして,遺言によって「遺産分割方法の指定」がなされている場合に,この対抗要件を備えるために必要な行為が,遺言執行者の権限とされています。
3 預貯金債権の払戻し及び解約の申し入れをする権限(同条3項)
同様に,遺言によって「遺産分割方法の指定」がなされている場合における預貯金の払戻しや解約が,遺言執行者の権限であるとしています。
4 遺言執行者の復任権(同法1047条)
旧法では,やむを得ない事由がなければ第三者に任務を行わせることはできないとされていたところ,遺言執行者の責任において第三者に任務を行わせることができるようになりました。
5 遺言執行者の通知義務(同法1007条)
遺言執行者が任務開始後遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければならないとする規定が新設されました。
当事務所では,遺言の作成から遺言執行者に就任し任務を行うことまでに対応可能です。是非ご相談ください。