今年度(2023年度)施行された・施行が予定されている法改正について

給料のデジタル払いの解禁

 先日、給料のデジタル払いが2023年4月1日から解禁になったという記事を読みました。今や多くの方が●●ペイといった決済サービスを利用していることなどを考えると、給料のデジタル払いのニーズも一定程度あるだろう、ということで、今回解禁されたものです。

 労働基準法では、給料の支払は現金でしなければならないと定められていますが(労働基準法24条)、労働者の同意があった場合には、会社は、デジタル払いをすることができるようになりました(労働基準法施行規則7条の2)。日頃何となく銀行の口座に給料の振込をしてもらっている方も多いと思いますが、これも、同じ規則に基づくものです。

月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げ

 同じ労働基準法の関係では、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率に関する改正もありました。

 大企業においては、従前から、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は50%となっていましたが、2023年4月1日からは、中小企業でも同様に、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が50%とされました(労働基準法37条1項但書/労働基準法附則138条の廃止。2023年4月1日施行。なお、それ以前は25%)。そんなに長時間にわたって時間外労働をするべきでないとは思いますが…(そもそも、割増賃金は、時間外労働を抑制するために定められているものです。)。

 中小企業にお勤めの方、総務や経理を担当している方は、就業規則がこれに従ったものになっているかどうか、確認してみてください。

所有者不明土地管理制度等の創設

 労働基準法関係の改正以外にも、さまざまな法改正がなされていますので、そのうちいくつかをご紹介したいと思います。

 例えば、相続の際、相続人の誰もが引き継ぎたくないような辺鄙な土地があったとします。このような場合、誰も相続登記をしないまま放置されることがあります。すると、登記簿を見ても実際の所有者が分からなかったり、所有者自体は分かっても所在が不明だったりします。そのような状態が継続すると、適切な管理がなされず、場合によっては第三者に被害が生じるような事態もあり得ます。

 そこで、所有者不明の土地建物や、所有者による管理が適切に行われていない土地建物につき、利害関係人の申立てにより、裁判所に管理人を選任してもらう手続が創設されました(前者につき民法264条の2~8、後者につき同9~14、いずれも2023年4月1日施行)。

共有制度の見直し

 これに関連して、土地建物の放置を少しでも減らすため、共有状態にある不動産の利用を促進し、あるいは、共有状態の解消を促進する改正もなされました。

 具体的には、共有者間での意思決定のルールを緩和したり、共有物の管理者制度を設けたりするなど、共有状態にある不動産の利用を促進するための改正がなされました(民法251条、252条、252条の2)。

 また、裁判での共有物分割における賠償分割は、これまで最高裁判例に基づき許容されてきましたが、これが明文化されました(同法258条2項)。さらに、共有者が、裁判所の決定を得て、所在等が不明である共有者の不動産の持分を取得できたり(同法262条の2)、当該共有者の不動産の持分を譲渡する権限を付与してもらったり(同法262条の3)する制度が創設されました(いずれも2023年4月1日施行)。

相続制度の見直し

 さらに、相続開始から10年経過後は、原則として、遺産分割にあたり、特別受益・寄与分の主張をすることができなくなります(民法904条の3、2023年4月1日施行)。ただでさえ10年以上も遺産分割がなされていない解決困難な相続問題につき、問題をさらに複雑化する特別受益・寄与分の主張を制限して、法定相続分等のなるべく画一的な基準に基づく解決に誘導することで、相続問題の解決を促進しようとするものです。この改正は、不動産の遺産分割をなるべく前に進めて、所有者不明の不動産の発生を防ぎ、遺産分割未了の不動産の管理の負担を減らそうという意図も含みます。

 もっとも、相続開始から10年以上が経過するまで遺産分割協議が行われない例は多くはないでしょうし、それまでに特別受益・寄与分の証拠が散逸してしまうケースもあるでしょう。

相続土地国庫帰属制度の施行

 以前ご紹介した相続土地国庫帰属制度(https://y-yotsuba.com/news/post-3232-2/)も、所有者が不明の土地が生じた場合に備えたものといえます。この制度は、2023年4月27日から施行されます。

 ただ、結構要件が厳しく、費用もそれなりにかかりそうなので、実効性がどのくらいあるのかについては、今後の評価を待つ必要がありそうです。

インボイス制度の導入

 テレビCMなどでもたびたび目にしますが、2023年10月1日施行予定の改正消費税法により、インボイス制度がついに導入されます。

 以前ご紹介をしましたので(https://yokohamatax.com/news/post-473/)、その詳細のご説明は省略しますが、簡単に。

 インボイス(適格請求書)とは、売手が買手に対し、正確な適用税率や消費税額等を伝えられるような形式内容の書類・データのことをいい、インボイスを発行できるようになるためには、税務署に申請して登録をしなければいけません。

 仕入税額控除のためにはインボイスの保存が要件の1つとなりますし、インボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れについては、原則として仕入税額控除の適用を受けることができません(そのため、インボイス発行事業者になりたくない小規模事業者との取引を敬遠する動きも出ています。)。

道路交通法の改正(自動運転レベル4の公道走行の解禁)

 最後に、2023年4月1日施行の改正道路交通法により、自動運転レベル4の公道走行が解禁されましたので、ご紹介します。

 自動運転レベル4とは、特定条件下(過疎地域・高速道路等)における、システムによる完全自動運転のことであり、ドライバーが運転操作を行う必要がありません。レベル3の段階では、システムの継続が困難な場合には、運転者が適切に介入する必要がありましたから、その違いは大きいと思われます。

 さらに上の段階(レベル5:条件に関わらずシステムによる完全自動運転がなされる)に行くにはまた少し時間が必要でしょうし、一般的に用いられるようになるにはさらに時間が必要でしょうが、そこまで行けば、交通事故は激減するだろうと思います。

 

 今回ご紹介した以外にも、さまざまな法改正がなされていますが、ぱっと目に付いたものをいくつかご紹介させていただきました。当事務所では、こうした法改正にも日々気を配り、情報をアップデートしています。

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