続・民事執行法改正

 裁判で勝訴判決を得たり,裁判所で和解をしているにもかかわらず,「相手方が支払ってこない!」という相談はよく受けますが,相手方の財産が特定できないと強制執行の手続を行うことはできません。

 相手方の財産を調べるにしても,何の手掛かりもなければ費用と時間をかけて調査しても大した情報を得られないこともあります。「泣き寝入りするしかないんですか!」となり,弁護士としても回答に窮する場面でもあります。このような民事訴訟の権利実現の実効性についてはかねてから問題とされていました。2003年に創設された財産開示制度も,使いづらさ等から,利用状況は低調だったようです。

 2019年5月に成立した民事執行法の改正によって,この財産開示制度が見直されたこと「債務者以外の第三者からの情報取得手続」が新設されたことは,以前のブログ(「財産の差し押さえができず困ったことはありませか?~民事執行法が改正されます~」https://y-yotsuba.com/debt/post-2307/)でも触れたところですが,改めて掘り下げてみたいと思います。

 財産開示手続の見直し

 財産開示手続は,相手方(債務者)本人から情報を得る手続です。申立ができる人の範囲が拡大したのは以前のブログのとおりですが,債務者が裁判所に来なかったり,嘘を言ったりしても過料の制裁しかなかったのが,改正により刑事罰(6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金)を科すことができるようになりました(改正法213条)。刑事罰の運用は改正後の状況を見守る必要がありますが,債務者に対する制裁としては,ある程度の実効性が見込めるのではないでしょうか。

 第三者からの情報取得手続の新設

 債務者以外の第三者からの情報取得手続についても以前のブログのとおりです。具体的にどのような情報が得られるかは,最高裁判所規則の制定を待つ必要がありますが,裁判所が情報提供を命令することにより,確実に情報を得られることが見込まれます。ただ,一つ注意が必要なのが,情報提供がなされたことは債務者にも通知されます(改正法208条2項)。これにより債務者が預金を引き出すことも想定されますので,速やかに強制執行を行う準備をして情報取得手続を利用する必要があると言えます。専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

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