民法改正について~第4回~「債権譲渡」「約款」

2019年4月26日

 民法改正についての4回めは,債権譲渡に関する改正点と,約款に関する改正点を取り上げます。

 

1 債権譲渡

 債権は,これを自由に譲渡することが認められていますが,現行民法では,債権者と債務者との間で,債権譲渡を禁止する特約を付すことが可能です。債権者が交代することによって取立が厳しくなったり,弁済する際に誰が債権者か確認する必要が生じたりすることから,債権者を固定するという債務者の利益を保護するために,このような特約を付すことが認められていると言われています。そして,この譲渡禁止特約が付された債権の譲渡は原則として無効とされています。

 他方で,債権者にとって債権譲渡は,弁済期が到来する以前に現金化する手段として,また譲渡担保に供することによって融資を得るための手段として活用されています。しかし,譲渡禁止特約が付されていると,このような活用の仕方が阻害されてしまいます。

 改正民法では,このような譲渡禁止特約に関する債権者と債務者の利害を調整しつつ,債権譲渡の資金調達手段としての活用を促進すべく,次のように定めています。

 すなわち,譲渡禁止特約が付されていても,有効に債権譲渡をすることを認め(但し,預貯金債権は除く),その一方で,債務者は基本的に元の債権者に弁済すれば足りることとしています。そして,債権の譲受人の保護は,譲受人から債務者に対し履行の催告を行い,相当期間内に履行されないときは,債務者は譲受人に履行をしなければならないとすることで図っています。また,譲渡人が破産したときは,譲受人から債務者に供託を請求することができることとされています。

 債権譲渡に関しては,譲渡時に発生していない債権(将来債権)の譲渡が判例上認められていましたが,これを明文で認める改正もなされています。

 

2 約款

 約款は,様々な取引で広く利用されていますが,民法には全く規定がなく,その意味すら明確ではありませんでした。改正民法では,「定型約款」という言葉を用いて,約款のうち一定のものに,以下のような法的効果を与えることとしています。

 この点,民法の原則によれば契約当事者が契約内容を認識して初めて拘束力が生じることになりますが,「定型約款」については,個別の条項を認識していなくても,その内容を契約内容とする旨の合意があるか,明示の合意がない場合でも定型約款を契約内容とする旨が表示されていれば,定型約款が契約内容になるとしています。そして,相手方(顧客)の保護については,その利益を一方的に害する契約条項であって信義則に反する内容のものは契約内容にならないとして図っています。

 また,現実に用いられている多くの約款では,「この約款は当社の都合で変更することがあります。」という条項が設けられています。これも民法の原則に従えば,変更には個別の相手方(顧客)の同意が必要となります。しかし,定型約款の内容を事後的に変更する必要が生じることがあるものの,多数の相手方(顧客)と個別に合意することは現実的に困難と言えます。改正民法では,契約当事者双方の利益の調整の結果,「定型約款」について一定の場合(変更が相手方の一般の利益に適合する場合等)に,一方的に約款を変更することで,契約内容を変更することを認めています。

 

 これまで特に重要と思われる改正点について触れてきましたが,他にも多くの改正点がありますので,適宜お知らせしていきます。

横浜の弁護士 横浜よつば法律税務事務所へのお問い合わせ 横浜の弁護士 横浜よつば税理士事務所

2019年4月26日民法改正