民法改正について~第2回~「保証」

2019年4月26日

 2020年(平成32年)4月1日から施行される改正民法について,前回は消滅時効について説明をしましたが,同様に身近な問題として,今回は保証に関する改正点を解説します。 

 

1 包括根保証禁止の範囲を拡大

 まず「根保証」とは,将来にわたり発生する複数の債務を保証するものです。通常の保証が特定の債務を1回保証するのと区別されます。そして,「包括根保証」は,ある債務者の債務について限度額と期間を定めないもので,2004年(平成16年)の民法改正により,貸金等債務について極度額を定めない根保証は無効となっています(民法第465条の2)。その他にも,保証期間が制限され(民法第465条の3),特別な事情が発生した場合には,途中で保証が終了することとされました(民法第465条の4)。

 今回の改正によって,貸金等債務以外の根保証(賃貸借契約に基づく債務の根保証)についても,その極度額を定めなければならないようになりました(定めない場合は無効となります。)。但し,保証期間については従前どおりであり,制限されません。また,特別事情のうち,主債務者の死亡,保証人の破産・死亡の場合は根保証が終了することとされますが,主債務者の破産の場合は終了しないことになります。  

 

2 事業用融資における第三者保証の制限

 会社の債務について代表者個人が保証をすることは現状頻繁に行われています。しかし,会社とそのような関係になく個人的な理由で保証人となった第三者が,想定しなかったような多額の保証債務の履行を請求されて,破綻する事例も多くあります。

 そこで,今回の改正により,会社と一定の関係にある者以外の第三者が保証をする場合に,公証人があらかじめ保証人となろうとする者から直接その意思を確認しなければならないことになります。この意思確認がないと,第三者保証は効力を生じません。

 

3 保証人に対する情報提供義務

 今回の改正では,保証人の保護のために,①保証契約締結時,②主債務者が期限の利益を喪失したとき,③委託を受けた保証人が請求したとき,に一定の情報提供を当事者に義務付けています。

  •  ①保証契約締結時

 個人が委託を受けて事業上の債務を保証する場合に,主債務者は,財産及び収支の状況,保証対象となる主債務以外の債務の有無・額・履行状況の情報を保証人となろうとする者に提供しなければなりません。これに違反した場合,保証人は保証契約を取り消すことができます。ただし,取消には,保証人が主債務者の財産状況等を誤認していたことと,債権者が主債務者の情報提供義務違反を知っていた(または知ることができた)ことが要件とされています。

  •  ②主債務者が期限の利益を喪失したとき

 まず「期限の利益」とは,分割返済の定めがある場合,各弁済期までは返済が猶予されるという債務者の利益をいいます。そして,「期限の利益を喪失する」とは,分割金の返済を怠るなどして,約定に基づき残金の一括払いを請求されることです。

 個人が保証人となった場合について,主債務者が期限の利益を喪失したときは,債権者はその事実を知った時より2か月以内に,保証人に対しその旨を通知しなければなりません。債権者が通知を怠った場合,債権者は実際に通知する日までに発生した遅延損害金については,保証人に対して請求できないことになります。これにより,期限の利益の喪失を知らなかった保証人が多額の遅延損害金の請求を受けることが防止されます。

  •  ③委託を受けた保証人(個人だけでなく法人の保証人も含む

 債権者は,主債務者から委託を受けた保証人から請求があったときは,主債務の元本,利息,違約金等について,不履行の有無,残額,残額のうち弁済期が到来しているものの額の情報を保証人に提供しなければならないことになります。

 

2020年4月1日の改正民法の施行まで2年ほどですが,今後も随時改正情報をお知らせしていきます。

 

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2019年4月26日民法改正