一時保護の司法審査の導入案について

いよいよ今年も残すところあとわずかとなりました。

 今回は、来年度の国会に上程予定とされている一時保護の新たな司法審査についてお話します。報道でご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、一時保護の事前又は直後に、裁判所に一時保護状(仮称)発布を申し立てることを必要とする新たな司法審査の導入が検討されています。

 厚生労働省の「児童相談所の一時保護の手続等の在り方に関する検討会」(以下「在り方検討会」と述べます)の詳細については、下記厚生労働省のホームページをご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-kodomo_554389_00020.html

 

現在の一時保護

 現行法の一時保護は、児童福祉法33条に「児童相談所長は、必要があると認めるときは、第26条第1項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。」と定められています。

要件は、「児童相談所長が必要と認めるときに」で児童相談所に大きな権限が認められています。期間は原則2か月で、さらに必要がある場合で親権者等の意に反する場合は、家庭裁判所の承認が必要になっています(児童福祉法33条5項)。

行政に大きな権限を認めることにより、児童を迅速に保護することが可能となっています。

 

一時保護の新たな司法審査と課題

 今回の在り方検討会では、次のように新たな一時保護の司法審査を導入しようとしています。

  • 一時保護の要件の明確化
  • 事前又は事後(一時保護から3日以内もしくは7日以内)に、裁判所に一時保護状発布の申立て(ただし、親権者等の同意が得られた場合や、期間内のごく短期間の一時保護の場合、申立ては不要)
  • 一時保護状発布の申立てが却下された場合は速やかに一時保護を解除すること
  • 児童の意見を聴き取ること

 

行政の権限が適切に行使されているか、三権分立の観点から司法が行政の権限行使を審査すること自体に問題はなく、この点歓迎すべきであると考えている方が大勢いらっしゃることと思います。

 ただ、上記案は、必ずしも児童相談所の運用に合っている訳ではありません。一時保護は、保護者(親権者と必ずしもイコールではありません)から子どもを保護する制度です。親権者等の同意がない場合が一時保護状発布の申立ての要件になっていますが、多種多様な家族形態がある現在、実は、親権者がだれかを確定することは、そんなに簡単ではありません。児童相談所は、戸籍謄本等を取り寄せて親権者を確定していくことになりますが、親権者が確定するころには、申立ての期間が過ぎてしまっていたなんてことも十分あり得ます。それ以外にも、対応体制の課題もあるようです。

 実際にどのような改正案となるかは、まだこれからですが、課題を踏まえてより良い制度設計がなされるようみていきたいと思います。

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