児童相談所って何をしているところなの?

 昨今、保護者からの虐待により、児童が死傷する事件が後を絶ちません。私たちの事務所がある横浜市での児童虐待相談件数も、平成29年度で6700件にもなり、年々増加傾向になっています(平成30年5月30日こども青少年局・教育委員会資料より)。児童虐待により児童が死傷する事件が発生すると、「児童相談所は何をやっていたのか。」と追及されることが増えてきていますが、みなさん児童相談所がどういった機関か分かっているようで分かっていないのではないでしょうか。
 
 今回は、児童相談所がどんなことを行っているか、児童虐待に絞って説明します。
 
 児童相談所は、通告などで要保護児童(保護を必要とする児童)を最初に把握します。児童虐待防止法第6条第1項は、全員に児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は速やかに通報するよう定めています。私たち弁護士は、第5条でさらなる早期発見義務が課されています。これらの通告は、守秘義務の範囲外とされ、通告者の匿名も保障されています。

 児童相談所は、通告を受けた後、児童の安全確保及び調査を行いますが、そのうち、「児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は、児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため」「必要があると認めるとき」は一時保護(一時保護所などで児童を保護することです)を行います。この一時保護は児童相談所の判断のみで行われることから、裁判所の許可が必要な逮捕・勾留に比べても、非常に大きな権限です。また、児童の安否確認が出来ない場合は、出頭要求や立入調査だけでなく、児童を探すために鍵を壊して自宅内に入ることも許される臨検・捜索という権限もあります(この臨検・捜索は裁判所の許可が必要になります)。

 児童相談所は、児童の安全確保を最優先し、児童、保護者、所属先の保育園・幼稚園・学校、関わりがある場合は行政機関、病院などから聴取して児童虐待の有無・程度を調査し、児童虐待があった場合は、在宅で関わっていくのが良いのか、施設に措置して中長期的に親子再統合を目指すのか、判断していきます。この判断は、担当者の独断とならないように、児童相談所が組織として判断しています。
 児童を一時保護していて、在宅で関わっていくと児童相談所が判断した場合は、保護者との面会、外出、外泊を経て、児童は自宅等に帰ります。その後、児童相談所へ保護者と児童が通い、必要なプログラムを受けていきます。
 他方、調査未了等で2ヶ月を超えて引き続き一時保護を行おうとする場合、児童相談所は、親権者らの意に反する場合は、家庭裁判所に申し立てて承認を経なくてはなりません(反対に、親権者らが同意した場合は、家庭裁判所へ申し立てる必要はありません)。
 施設に措置が必要だと児童相談所が判断したが、親権者らの意に反する場合は、児童相談所は、家庭裁判所に申し立てて承認を経なくてはなりません(一時保護と同様、親権者らが同意した場合は、家庭裁判所へ申し立てる必要はありません)。家庭裁判所で施設措置の承認がなされた後も、2年ごと、家庭裁判所に申し立てて更新をしていくことになります。児童相談所は、施設に措置している間、家族の再統合プログラムを作成し、児童が自宅へ戻れるよう取り組んでいきます。自宅に戻った後は、必要に応じて、児童相談所に通ってプログラムを行う場合もあります。様々な事情により、自宅に戻れない児童は、施設から学校に通学し、進学・就職して巣立っていきます。その間、児童相談所は施設と連携しながら児童のサポートをしていきます。
 
 以上、児童相談所の児童虐待への対応を非常に大まかに説明いたしました。児童相談所は、「児童の福祉」「児童の安心・安全」を最優先に児童及びその家族の支援を行っています。

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