「特別の寄与」とは
1 それまでは、被相続人の維持増加について貢献をした相続人については、寄与分の請求が認められていましたが(民法904条の2)、令和元年7月1日施行の改正相続法によって、相続人以外の親族について、特別寄与料の請求が認められるようになりました(民法1050条)。
特別寄与料は、①被相続人の一定範囲の親族が、②療養看護その他の労務の提供をし、③それにより被相続人の財産の維持増加に特別の寄与をしたこと、④無償性が要件とされていますが、実務上特に問題となるのは、③の特別の寄与についてです。
この点、特別寄与料の請求者は、相続人ではないため、相続人と異なり被相続人に対する関係で、民法上の義務を負わないことから、それまでの寄与分についての「特別の寄与」と同様に解することは相当ではない(より緩やかに解してよい)と言われていましたが、裁判例の蓄積がなく、具体的なことは不明でした。
2 静岡家裁令和3年7月26日審判は、この点について判断しました。
事案は、被相続人の弟(申立人)が被相続人の子らに特別寄与料の支払いを求めたものです。
裁判所は、申立人については、月に数回程度入院先等を訪れて診察や入退院に立ち会ったり、手続きに必要な書類を作成したり、身元引受けをしたりといった程度にとどまり、専従的な療養看護等を行ったものではなく、その者の貢献に報いて特別寄与料を認めるのが相当なほどに顕著な貢献をしたとまではいえない、として「特別の寄与」を認めませんでした。
この点、「東京家庭裁判所家事第5部における相続法改正を踏まえた新たな実務運用」においては、「専従性」について「療養看護の内容が片手間なものではなくかなりの負担を要するものであること」が必要とされていますが、同審判は、これを前提に「専従的な療養看護」が必要であるとしたものです。ここからは、寄与分よりも緩やかでよいとしても、それなりの(相当程度の)貢献が要求されることがわかります。
また、本審判は、消滅時効の起算点についても判断しています。特別寄与料は、相続の開始及び相続人を知ったときから6か月(民法1050条2項但書)という短い時効期間を服すので注意が必要です(除斥期間は相続開始から1年)。