遺言との向き合い方

 業務の関係で、比較的ご高齢の方とお話をする機会が多くあります。皆様お元気で、生き生きとしていらっしゃいます。口では「もう年だから」みたいなことをおっしゃる方も多いですが、実際には、身体的に大きな問題はなく、お気持ちも元気いっぱいという方が、たくさんいらっしゃいます。本当に素晴らしいことだと思います。

 

 一方で、いつか自分が亡くなってしまうということを、直視できない、直視したくない方が、一定数いらっしゃるように感じます。これは、お元気なことの裏返しなのですから、非難されるようなことではありませんが…。

 以前、数人のご高齢の方がいわゆる終活の話を始めたのがたまたま耳に入ったことがあったのですが、そのうちのお一人が、不快そうに「なんでこの年で遺言とかエンディングノートとかの話をしないといけないのか」と発言したことが妙に印象に残っています。

 

 そうした方も、自分はずっと死なないと思っているわけではないはずです。しかし、筆者の偏見ですが、「遺言なんてまだ書かなくて大丈夫」とは思っていそうな気がします。また、その方の配偶者やお子さんが「遺言を書いてよ」などと持ち掛けようものなら、「自分はまだ元気だ」「自分に死ねと言うのか」と怒ってしまう方も一部いらっしゃるような気がします。

 なんだか仮定と勝手な想像の話ばかりになってしまい恐縮です。しかし、「親に遺言を書いてと言ったらきっと怒るから言えない」という内容のご相談を受けたことが何度かありますので、あり得ない話でもないように思います(親の側は、自分はそんなに怖い人間ではない、と思っているかもしれませんが。)。なお、結局親に遺言を書いてと言えなかった結果、やはり親は遺言を書かずに亡くなり、その後かなり面倒な相続処理をすることになったケースを担当したこともありました。

 

 自分が死ぬことなんてあまり考えたくないだろうなとは思いますが、跡を継ぐご家族のため、専門家に相談するなどして、必要に応じて遺言その他の対策を採っていただければと思います。また、配偶者や子どもたちが「遺言を書いてよ」と言ってきても、怒らずにその理由を聞いてあげてほしいと思います。もっとも、遺言を書いても、一部の相続人の方が不服に思うこともありますから、遺言を書けば全て丸く収まるというわけでもないのですが(極端な例としては、一部の相続人にのみ有利な遺言を書く場合等)。

 そこで、配偶者や子どもたちに対して「自分はこういう遺言を書くよ」という説明をしておいたらどうでしょうか、というアドバイスをしたこともありました(ただし、説明することが必ずしも良いとはいえないので、仮に説明するとしても、慎重に検討するべきだと思います。)。説明をしたらしたで、直接不満を言われることが予想されるのであれば、説明したくなくなるでしょうが…。また、配偶者や子どもたちの意見を聞きすぎたら、自分自身の意思決定であるはずの遺言が、誰のためのものだか分からなくなるという問題もあります。

 

 難しいですが、最終的には、ご自身でよく考えて、どうするか決めていただきたいなと思います。といっても、どんなことを考えなければいけないのか分からない、という方も多くいらっしゃるでしょうが、世間話をするくらいのつもりで、お気軽に、ご相談にお越しください。当事務所の弁護士・税理士は、相続案件の経験が豊富ですから、皆様のお気持ちを多少なりとも汲んでさしあげられるのではないかと思います。

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