どうなる「成年後見制度」
はじめに
2000年から始まった成年後見制度は、本人の判断能力が不十分になった場合に、家庭裁判所の審判により、本人の判断能力に応じて①成年後見人、②保佐人または③補助人が選任される、本人を保護・支援する制度です。
この制度についてはこれまでにも当ブログで紹介してきましたが、制度の運用をする中で、様々な問題があることが分かってきました。
制度の問題点
成年後見制度の問題点としては、以下の3点が大きなものとして挙げられます。
①途中でやめられない
本人の判断能力が不十分であることから成年後見人等が選任される、という建て付けのため、判断能力が回復しない限り、利用を途中でやめることはできません。
そのため、判断能力の回復が難しい認知症の高齢者の場合などは、死亡までずっと成年後見人等がつく、という状況になっています。
②運用が硬直的
家庭裁判所が成年後見人等を選任する、という建て付けのため、成年後見人等の交代がなかなか実現せず、本人がそのニーズに合った保護を受けることができないという問題点がありました。
成年後見人等に問題があった場合には家庭裁判所が解任をすることも可能ですが、実際には解任や交代には時間がかかり、本人にとって好ましくない状況が続いてしまいます。
③費用が高い
弁護士や司法書士などの専門職後見人が選任された場合に、家庭裁判所が成年後見人等の報酬を決定し、本人の財産の中から支出されますが、その報酬が高い、という批判があるところでした。
(なお、本人の資力が不十分の場合には、自治体による報酬助成制度を利用できる場合もあります。)
制度の見直しに向けて
上記のような問題点があることから、国としても制度を見直そうという動きが高まり、政府の法制審議会の部会において検討がされていました。
昨年6月から調査審議が行われていましたが、今月になって中間試案が発表されました。
この中間試案では、上記の問題点3点について、次のような検討がなされていることが発表されました。
①途中でやめられない点
制度開始の際に考慮した必要性がなくなれば終了する案などを検討し、やめられる制度にする。
②運用が硬直的な点
新たな解任事由を設けるなどして、後見人の交代も認めやすくし、使い勝手の良い制度にする。
③費用が高い点
家庭裁判所が相当な報酬を判断するにあたり、成年後見人等が行なった事務の内容などが考慮要素となることを引き続き検討する。
なお、中間試案とは別に、成年後見人等になる者として、市町村等で研修を受けた「市民後見人」を活用する動きも進んでいます。
より良い後見制度を目指して
新聞報道(本年6月11日付毎日新聞)によると、認知症の高齢者は約471万人と推計されるのに対し、昨年末の制度利用者は約25万人であり、後見の期間が設けられないことが利用者の伸び悩みになっている面もあるようです。
新聞報道のとおり、上記で挙げた問題点のうち、①の「途中でやめられない」ということが一番大きな問題であると考えられます。
途中でやめられず長期間にわたる結果、成年後見人等の不正が生じたり、費用が積み重なって高額になる、という問題につながっているところもあります。
制度の改正については、早ければ来年の通常国会に関連法案が提出されるかもしれないということであり、着実に変わっていきます。
本人を保護・支援するという制度の根本を揺るがすことなく、制度の改正に対応しつつ、今後もしっかりと成年後見人等を務めていきたいと思います。
何か相談ごとがあったり、悩んでいることがありましたら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。