【横浜 相続】相続争いを避けるための遺言作成~3つの方法~

2020年3月16日

「せっかく遺言を書いたのに,紛争になってしまった。」ということは,実際上よくある話だと言えます。というのも,民法では,遺留分という制度が定められており,遺言であっても完全に自由に決めることはできないからです。遺言さえ作成すれば,それで全て安心という訳にはいかないこともあるのです。

遺留分とは,相続人(兄弟姉妹は除きます)のために法律によって保障されている一定割合の相続分のことです。例えば,相続人ではない人(受遺者又は受贈者)に全て相続させる,という遺言を書いたとしても,遺留分を有する相続人から遺留分侵害額請求権を行使されてしまうと,遺留分を侵害している分だけ,受遺者等は遺留分侵害額請求をした相続人に金銭を支払わなければなりません(ちなみに,平成31年7月1日の改正法施行前は現物返還が原則でした)。

このような事態を避けるために,いくつか方法が考えられます。

 

1 公正証書遺言の付言事項

公正証書を作成する際に,法的効力を有しない付言事項として,相続人に対して遺留分侵害額請求権を行使しないことを求める記載をすることは,よく行われていると思います。遺言者がなぜそのような遺言をするに至ったのか,その心情を丁寧に説明することで,相続人からの理解を得られれば,遺留分侵害額請求権を行使せず,紛争を抑止する効果を期待できるからです。

ただし,あくまでも法的効力を有しない付言事項ですので,遺言者,受遺者等,相続人の関係にもよると思いますが,遺言者の思いが及ばすに受遺者等と相続人との間で紛争になってしまう可能性は否定しきれません。

 

2 遺留分の放棄

確実に遺留分侵害額請求を排除するための方法として,遺留分の放棄というものが定められています。これは遺言者の生前に家庭裁判所の許可を得ることによって認められます。許可の申立ができるのは遺留分を有する相続人のみですが,その相続人に遺産を残さないことにつき理解が得られる見込みがあれば,遺言者から説明をして,相続人から遺留分放棄許可の申立をしてもらうことが考えられます。

ただし,遺留分の放棄は,相続人の自由意思によるものであることが必要です。この点に関して,家庭裁判所の許可の判断にあたっては(必ずしもそれが無ければ認められないというわけではありませんが),放棄につき相当の代償が支払われているかどうか,という点が重視されています。したがって,既に相当の援助をしていれば別ですが,申立に際しては遺留分に相当する財産を与える必要があります(この場合は贈与税の対象となることに注意が必要です)。それでも遺留分を有する相続人全員から放棄してもらうことができれば,相続開始後の紛争を確実に回避することが可能です。

 

3 遺留分に配慮した遺言の作成

 遺留分侵害額請求権を行使されることが見込まれるのであれば,紛争予防のためには,遺留分を侵害することのないように遺言を作成しておく,ということも考えられます。この場合,相続の対象となる財産を評価して,どの相続人がどれくらいの遺留分を有するかを把握して遺言を作成する必要があります。その場合,遺言作成後に財産構成が変動することが予想されるのであれば,それも見越して誰にどれくらい与えればよいか考えることになりますし,相続開始前に大幅に財産が増加したようなときには,遺言を作り直すことも必要となるでしょう。

 

 紛争予防という観点からは,生前に相続人と話し合うことができるのであれば,確実な方法である遺留分の放棄をまず検討すべきでしょう。それが難しいということであれば,付言事項を工夫するか,遺言内容で遺留分に配慮することになります。とは言え,付言事項を工夫するとしても,遺留分を有する相続人からすれば,法定相続分による相続を期待していることが通常だと思われますので,遺言で突然言われたとしても,なかなか遺留分侵害額請求権を行使しないという判断に至ることは少ないのではないでしょうか。

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2020年3月16日相続