遺産分割の種類と、贈与税・所得税のチェックポイント(後編)

2019年4月26日

相続がおきて、遺産分割を行う時には相続税以外の税金のことも考えておく必要があります。

そして、相続の場面で気をつけたい贈与税と所得税についてご紹介しています。

 

3つの遺産の分け方

遺産を分ける方法としては「現物分割」「換価分割」「代償分割」の3つが用意されていて、

前回は「現物分割」と「換価分割」の場合を取り上げました。

 

今回は、残りの1つ、「代償分割」の場合についてご紹介します。

 

代償分割について

この「代償分割」は、現物の財産でバランスよく分けられないときに、他の財産でうまく調整して分ける方法です。

いくつかのケースを具体例で見ていきましょう。

 

 

最初は、相続人が兄と弟の2人で、5,000万円の実家と1,000万円の預金が相続財産というケースです。

 

兄と弟が法定相続分どおり2分の1ずつ分けようとすると、3,000万円ずつということになります。

自宅を兄弟の共有名義することは避けたいところです。

兄が5,000万円の実家を、弟が1,000万円の預金をそれぞれ相続すると、兄は2,000万円だけ多くもらってしまうことになり、弟としては納得できません。

この時、もしも兄自身が元々2,000万円の預金を持っていたとすると、元々持っていた2,000万円を弟に渡してあげることで、兄弟がそれぞれ3,000万円ずつ受け取ったことになり、弟も納得です。

相続財産を多くもらい過ぎた「代償」として、別の財産を渡して調整する方法なので「代償分割」といいます。

 

このケースのようなバランスの時に、お金を代償物として調整すれば、贈与税や所得税は発生しないことになります。

 

ところが、このケースで兄自身が2,000万円の別荘を元々持っていたとして、その別荘を代償物として弟に渡す場合には、兄が弟に別荘を2,000万円で売ったことになってしまいます。

兄は不動産を売ったということで所得税を考える必要があります。

不動産を売ったことにはなりますが、弟からお金を受け取れませんので、所得税の納税資金をどう確保するかも考えておかなければなりません。

 

 

次は、相続人が兄と弟の2人ということは同じですが、兄が受取人の生命保険金(死亡保険金)5,000万円を受け取り、その他の相続財産が1,000万円の預金だけだったというケースです。

 

兄の方に保険金がド~ンと入ってしまうので、兄は兄弟で仲良く3,000万円ずつ分けようと言い出します。

保険金はお金なので分けやすいということで、弟が1,000万円の預金を相続して、さらに兄が2,000万円を弟に渡せば解決、といきたいところですが、この2,000万円は兄から弟への贈与になり、贈与税がかかってしまいます。

 

 

意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、生命保険金(死亡保険金)は、相続財産ではなく、受取人固有の財産(このケースでは兄自身の財産)です。

相続財産にはならない生命保険金が、相続税を計算する時に登場するのは、本来は相続財産ではない生命保険金を相続財産と「みなす」取扱いがあるためです。(これを「みなし相続財産」といいます。)

 

このケースで兄が受け取った生命保険金は、兄の固有の財産であり、兄は相続財産をもらっていません。兄が弟に渡した2,000万円というお金は、兄が相続財産を多くもらい過ぎた「代償」にならないのです。

 

 

遺産分割によって相続人間のバランスを調整する際には、その調整の仕方によって相続税以外の税金がかかってしまう場合があります。

ご自身がお亡くなりになってしまった後に財産をどう分けて欲しいかをお考えの方もいらっしゃるかと思います。

心配な方は、今一度、思いがけない税金がかかってしまわないかを確認されてはいかがでしょうか。

 

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2019年4月26日相続