【債務整理 横浜】 住宅ローンの支払いが苦しくても自宅を手放したくない! 住宅資金特別条項付個人再生

2020年7月30日

 新型コロナウィルスが世界的に猛威を振るい,経済にも大きな影響を及ぼすと言われています。
 新型コロナウィルスの影響による経済の緊縮ムードや,産業構造,労働のあり方の急激な変化により,一時的な収入の減少があった方もたくさんおられるのではないかと思います。

 今回は,収入が減少した中,住宅ローンその他の借金の整理についてお悩みの方へ,住宅資金特別条項付個人再生のごく簡潔なご案内(したがって正確な表現を用いない箇所があります。)と,ご注意いただきたい点をご紹介します。なお,個人再生には小規模個人再生と給与所得者個人再生がありますが,今回は小規模個人再生を念頭にご案内します。

 

第1 住宅資金特別条項付個人再生とは

 住宅資金特別条項付個人再生とは,抱えている借金のうち,住宅ローンについては例えばもともとの契約のまま毎月支払うこととし(その他リスケジュールをするなどのパターンもあります。),その他の債務(金融機関やカード会社からの債務です。滞納税金などの公租公課は除きます。)については,一定程度減額した上で3年以内(特別な事情があれば5年以内)に支払う内容の再生計画案を裁判所へ提出し,一定の債権者の同意を得て債務を減額する手続をいいます。
 
 一定程度減額して,という点は,弁済すべき最低総額が決められており,以下の①②で算定した金額のいずれか高い方となります。

①債権総額(遅延損害金含む)による基準(住宅ローンは除きます。)
・債権100万円未満:当該債権額全額
・同100万円以上3000万円以下:債権総額の5分の1相当額または100万円の高い方(ただし,5分の1相当額が300万円を超える場合は300万円。)
・同3000万円超5000万円以下:債権総額の10分の1

    例)  債権が 400万円 → 最低弁済額 100万円
            800万円 →       160万円
           1800万円 →       300万円
           4000万円 →       400万円

②清算価値基準
 ご本人が保有する財産(預金,保険解約返戻金,将来の退職金の一部,住宅の住宅ローン控除後の評価額など。評価の基準は裁判所により異なるようです。)の価値の総額。

→<算定した①②を比較して高い額>

 例) 住宅ローンを除く債権が800万円,本人の保有する財産が預金10万円,住宅ローン控除後の不動産の評価額が300万円の場合
   ①の基準: 800万円の5分の1 = 160万円
   ②の基準: 10万円+300万円 = 310万円
= 高い②の基準で310万円を原則3年(特別な事情があれば5年以内)で返済する計画案を作らなければなりません。住宅ローンの支払は別途必要です。このように,不動産がアンダーローンですと,最低弁済額は厳しくなることが多いです。

 また,一定の債権者の同意とは,債権者の頭数の過半数かつ債権総額の2分の1以上の債権者の同意をいいます。住宅ローン債権者は,頭数・債権総額から除外します。

    例) 住宅ローン債権者     債権額3000万円  = 除外
       A銀行              500万円
       B公庫              200万円
       Cさん(知人)          200万円

 →・A銀行のみ同意,B公庫・Cさん不同意 = 頭数の過半数の要件を充たさず×
  ・B公庫・Cさんが同意,A銀行が不同意 = 債権総額の2分の1以上の要件を充たさず×
 → A銀行の同意は絶対必要な上,B公庫かCさんのどちらかが同意しなければなりません。

 このような手続きを経て再生計画案が認可されれば,あとは計画案どおりに減額された後の債務を弁済していくことになります。住宅ローンについても予定どおり支払えれば,自宅を手放す必要がなく債務が整理できます。

 

第2 住宅資金特別条項付個人再生に関する注意点

 このように,住宅資金特別条項付個人再生は,これにマッチするご事情でお悩みな方にとっては大いに救いとなる手続ですが,以下のように,住宅資金特別条項付個人再生が使えないケース,あるいは使うにもリスクが伴うケースがありますので,ご注意ください。
  

1 不動産担保ローンを借りる → 住宅資金特別条項付個人再生との関係では×

 住宅資金特別条項を付すためには,住宅ローン以外の債権について抵当権が設定されていないことが必要です(住宅ローン以外の債権について抵当権が設定されていると,その抵当権の実行により結局住宅を失うことになり,その状況下で住宅資金特別条項を付けて住宅を守ろうとする実益がないからです。)。
 したがって,例えば事業資金や教育資金等のために自宅に抵当権を設定して資金を借りることを検討している方は要注意です。
 また,いま既に住宅ローン以外の債権について住宅に抵当権が設定されている場合に住宅資金特別条項を付するには,その住宅ローン以外の債権を完済し,抵当権を消滅させることが必要となります(借換えでも,新たな債権者からの借入れについて抵当権を設定しなければOKです。)。

 

2 税金の滞納を放置する → △ (滞納処分で不動産を差押えられると×)

 税金の滞納があると,再生手続の裁判所から,役所や税務署などと分納の協議を行いその結果を報告するよう求められ,その分納の月額を毎月の生活上の支出として考慮しなければならなくなります。必然的に債権者への返済原資は減少してしまい,履行可能性,すなわち再生計画案どおりに本当に返済ができるのか,という点に大きく影響します。
 それだけでなく,税金の滞納が重なると,滞納処分として不動産が差し押さえられてしまうことがあります。この場合,1の不動産担保ローンと同じように,その滞納額を完納して差押えを解除しない限り,再生申立てにあたり住宅資金特別条項を付することができません(その差押えにより競売が申し立てられると結局住宅を失うことになり,その状況下で住宅資金特別条項を付けて住宅を守ろうとする実益がないからです。)。
 したがって,税金を滞納し,それを放置することは,住宅資金特別条項付個人再生を検討する場合は特に注意する必要があります。

 

3 事業資金等のために政府系金融機関から融資を受ける → △?

 ここからは住宅資金特別条項付に限った話ではなく個人再生全体に言えることですが,政府系の金融機関である〇〇公庫や,□□県や△△市の信用保証協会が債権者ですと,必ずしも再生計画案に同意してくれないことがあると言われています(私が数年前に担当した〇〇公庫から借入れをした方の件は,ビクビクしながら進めましたが,結果同意をしてくださり事なきを得ました。そのため,「必ずしも」と表現しました。)。
 再生計画案の同意要件は,再生債権者の頭数の過半数かつ債権総額の2分の1以上の債権者の同意ですが,比較的大きな金額になりがちなこれら機関からの借入れによって,その機関が同意をしてくれないと,それだけで債権総額の2分の1以上の同意の要件が欠けてしまい,再生手続が失敗に終わってしまうという状況に陥ることが考えられます。
 したがって,近時,新型コロナ関連の相談窓口が設置されたり特別貸付などの商品が紹介されたりしていますが,将来的に個人再生を検討する可能性があるなかで政府系の金融機関等から大きな融資を受ける場合には,注意が必要です。

 

4 個人や勤務先・得意先会社から借り入れをする → △

 これらの債権者は,再生手続についての十分な情報を必ずしも有しておらず,再生計画案への同意について感情的な部分が上回ることも考えられるため,3と同じように再生計画に同意をしてもらえるかどうかが不確実となります。
 したがって,これらの債権者数が多い,あるいはこうした債権者への債務額が大きい場合は,これらの債権者が同意をしてくれるかどうかが再生手続の成否を左右することになりますので,注意が必要です。
 なお,「個人」に関連して,自身の借入れについて知人やご親族に連帯保証人になってもらうことが考えられますが,その上で個人再生手続をしてご自身の債務が減額できたとしても,その連帯保証人の責任は元のままですので,その点も注意が必要です。

 

5 転職する → △

 個人再生においては,再生計画案が履行できるよう,ご本人の収入が安定していることが必要です。
 とはいえ,やむを得ず転職するということはあり得ると思います。
 転職した場合,そのあとの収入が一定期間安定的に得られていれば,これを再生手続でも明らかにして手続を進めていくことは可能ですが,転職を繰り返したり,収入が不安定になったりしてしまうと,裁判所から本当に再生計画案に従った履行ができるのかと,履行可能性を疑われてしまいますので,要注意です。
 なお,裁判所は,この履行可能性は,ご本人のみならず家計を支えている世帯員の収入も踏まえて判断しているので,もしご本人の収入だけでは履行可能性が認められにくい状況でも,同居する他の世帯員の収入で補うことは可能です。

 

6 配偶者との関係が悪化する → △または×

 経済的な問題に直面している場合はどうしても家庭内もギスギスしがちになることが考えられますが,5で述べたとおり同一世帯員の収入で履行可能性を補充することができるので,再生手続を行うにあたっては,世帯全体で同じ方向を向いていただく必要があるケースが多いです。特に,配偶者との関係には注意すべきです。
 世帯全体が一つ屋根の下で生活していれば協力し合えますが,極端な話,配偶者との関係が悪化して別居・離婚となれば世帯全体の収入が減るほか,婚姻費用・養育費といった支出も増えてしまい,それによって個人再生手続が到底進められなくなってしまうということも,ありえない話ではありません。
  

第3 まとめ

 いかがでしたでしょうか。
 住宅資金特別条項付個人再生の方針を立てる場合は,現状そもそもこれが利用可能かどうか,利用可能な状況となるにはどのような行動が必要か,最低弁済額はいくらか,最低弁済額は履行可能かどうか,債権者の同意が得られるか,といったさまざまな点について事前の検証が不可欠となります。
 もちろん,昨今の時世から,一時的に借入れをする必要性なども考えられますが,深みにはまって破産しか選択肢がない,自宅も手放さざるを得ない,となってしまう前に,住宅資金特別条項付個人再生を視野に入れるべき事例もあるように思います。
 住宅資金特別条項付個人再生を含む債務整理をご検討の方は,是非お早めにご相談下さい。

 

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