11月からフリーランス・事業者間取引適正化等法が施行されます
令和6年11月1日より、フリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されます。
近年、フリーランスという働き方が増えてきました。これは、良く言えば、自由な働き方、働き方の多様化の表れといえます。一方で、フリーランスの立場は決して強くはなく、そのため、取引先との関係で、報酬の不払やハラスメントなどのトラブルも起きているようです。そこで、フリーランスの取引上の地位の向上を図るために制定されたのが、フリーランス・事業者取引適正化等法です。
その内容は、要するに、
「事業者がフリーランスに業務を委託する場合、取引の適正化・就業環境の整備のため、事業者は一定の義務を負い(取引条件の明示等)、場合によっては、事業者に対し一定の行為が禁止される(報酬減額の禁止等)」
というものです。
なお、形式的には業務委託であっても、実質的に労働基準法上の労働者である場合には、労働基準法等が適用され、フリーランス・事業者取引適正化等法は適用されません。また、従業員を使用するフリーランスもいますが、この法律は、従業員を使用するフリーランスには当てはまりません。
以下、フリーランス・事業者取引適正化等法の概要をご紹介します。フリーランスの方にとっても、フリーランスと取引される方にとっても、重要なので、チェックしてみてください。なお、これにあたり、厚生労働省のパンフレット(https://www.mhlw.go.jp/content/001278830.pdf)を参考にしましたので、詳しくはそちらもご確認ください。
1 一般的な規制
(1)取引条件の明示義務
事業者がフリーランスに業務を委託する場合には、直ちに、取引条件を、書面又は電磁的方法で明示しなければいけません。具体的には、①双方の氏名・名称、②業務委託日、③委託する業務の内容、④納品日や作業日、⑤納品・作業の場所、⑥報酬の額・支払期日などについて明示する必要があります。
この法律で規制を受ける事業者としては、基本的には、従業員を使用する事業者が想定されていますが、取引条件の明示は、フリーランスが別のフリーランスに業務委託する場合にも必要になります。
(2)期日における報酬支払義務
事業者は、役務の提供等を受けた日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、支払期日を定めて、その日までに報酬を支払わなければいけません。
なお、事業者からの業務委託が、他の事業者から受注した業務の再委託であって、事業者からフリーランスに対し、①再委託である旨、②元委託者の名称、③元委託業務の対価の支払期日が明示された場合には、元委託の支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で、支払期日を定めて、その日までに報酬を支払えばよいこととされています。これは、フリーランスに発注した中間事業者の資金繰り等に配慮したものです。
(3)募集情報の的確表示義務
事業者は、広告等によりフリーランスを募集する際は、その情報について、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければいけません。
具体的には、表示に当たり、①業務の内容、②業務に従事する場所・期間・時間に関する事項、③報酬に関する事項、④契約の解除・不更新に関する事項、⑤フリーランスの募集を行う者に関する事項について、虚偽の表示・誤解を生じさせる表示となっていないか、正確かつ最新の内容となっているか、を確認する必要があります。
(4)ハラスメント対策に係る体制整備義務
事業者は、ハラスメントによりフリーランスの就業環境を害することのないよう相談対応のための体制整備その他の必要な措置を講じなければいけません。また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として不利益な取扱いをしてはいけません。
2 一定期間以上の期間行う業務を委託する場合の規制
(1)発注事業者の禁止行為
事業者が、フリーランスに対し、1か月以上の期間行う業務を委託する場合、以下のことが禁止されます。これは、フリーランスから了解を得たり、フリーランスと合意したりしていても、また、事業者に違法性の意識がなくても、違反になります。
ア 受領拒否
フリーランスに責任がないのに、成果物の受取りを拒むことは、禁止です。
イ 報酬の減額
協賛金の徴収、原材料価格の下落などの名目・方法・金額にかかわらず、あらゆる減額行為が禁止です。
ウ 返品
フリーランスに責任がないのに、受領した成果物をフリーランスに引き取らせることは、禁止です。不良品があった場合は、受領後6か月以内に限り返品できます。
エ 買いたたき
通常の対価に比べ著しく低い報酬の額を定めることは、禁止です。
オ 購入・利用強制
正当な理由なく、事業者が指定する物や役務をフリーランスに強制的に購入・利用させることは、禁止です。
カ 不当な経済上の利益の提供要請
名目を問わず、報酬の支払とは独立して、フリーランスに金銭・役務当を提供させることは、禁止です。
キ 不当な給付内容の変更・やり直し
フリーランスに責任がないのに、費用を負担せずに、フリーランスの役務提供等の内容を変更させるなどして、フリーランスの利益を不当に害することは、禁止です。
(2)育児介護等と業務の両立に対する配慮義務
事業者は、フリーランスからの申出に応じて、
ア 6か月以上の期間で行う業務委託について、妊娠・出産・育児介護等と業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければいけません。
イ 6か月未満の期間で行う業務委託について、育児介護等と業務を両立できるよう、必要な配慮をするよう努めなければいけません。
(3)中途解除等の事前予告・理由開示義務
事業者は、フリーランスとの間における6か月以上の期間行う業務委託について、契約の解除又は不更新をしようとする場合、例外事由(①第三者の利益を害するおそれがある場合、②他の法令に違反することとなる場合)に該当する場合を除いて、解除日又は契約満了日から30日前までにその旨を予告しなければいけません。
また、この予告の日から契約が満了するまでの間に、フリーランスから請求があった場合、事業者は、例外事由に該当する場合を除いて、フリーランスに対し、解除・不更新の理由を遅滞なく開示しなければいけません。
3 違反行為への対応
フリーランスは、公正取引委員会等に対し、事業者に違反と思われる行為があった場合には、その旨を申し出ることができます。
公正取引委員会等は、その申出の内容に応じて、報告徴収・立入検査等を行い、事業者に対して、指導・助言のほか、勧告を行い、勧告に従わない場合には命令・公表をすることができます。命令違反には罰金もあります。
なお、事業者は、公正取引委員会等に申出をしたことを理由に、フリーランスに対し不利益な取扱いをしてはいけません。