会社破産の流れ② ~営業停止から申立てまでにおいて重要なこと~

2019年4月26日

こんにちは。

 

今回は,会社破産における,営業停止から申立準備についての基本的なことです。

 

<注意書き>

営業を停止せずにいきなり破産申立てというやり方もありますが,資産・負債の状況が定まらないこと,賃借物件や継続的契約の整理ができずに破産手続が始まることにより財団債権(一般の破産債権よりも優先して支払いが受けられる債権)が増大するなどの問題があるので,私は営業を停止してから申立準備をしてなるべく管財人が動きやすい状態に整理して申立てをするというやり方を取っています。

1 受任通知発送

 

 営業を停止し,破産の準備に入る段階で,代理人が受任通知書を債権者・売掛先等の債権者に送付し,ここから代理人が窓口となり,情報の整理を始めます。

 会社の現預金をこちらでお預りしたり,従業員を解雇する際にお渡しする資料を作成したりといったことは,事前に進めておきます。
 受任通知発送後は,いろいろなところからいろいろな連絡が入るので,代理人としても会社の事情や今後の見通しを説明したり,感情的なお話をうかがったり(債権者が感情的になるのはもちろん当然と思います。),こちらが応じ難い要求には毅然と対応したりということが必要となります(逆に,債権者から貴重な情報をいただくこともありますし,債権者の協力を仰いで申立てに必要な書類の一部をいただくこともあります。)。
 私が駆け出しのころ,リース債権者の担当者らがリース物件を今日中に返せと当時の所属事務所に大挙して押し掛けてきて(現実問題としてその日に返還は到底無理でした。),うかつに事務所内に通してしまったところ,何を言っても誰一人帰ってくれないので,小田原から直帰予定のボス弁にSOSを出して事務所に戻ってきてもらい救けてもらったことがありました。
 リース物件はこのようにリース会社から引揚げを求められることが多いので,なるべく早めに対応します。
 もたもたしているとリース債権者から不満が出るだけでなく,電気や水道を止められてしまうことがあるので,そうなると,冬場など,電気がつかない工場や事務所で,トイレを我慢しながら引揚業者(なかなか何時ピッタリに行きますと言ってくれません。)を震えて待つという非常に切ない状況になります。

 

2 申立準備の流れ

 

 基本的には,
会社事務所等,書類が一番ありそうな場所に大きめのキャリーケースをゴロゴロ持って行ってお邪魔し,書類を預かりながら打ち合わせをして,預り資料を私が事務所に持ち帰って整理する。
   ↓
こちらの整理が進んだところで再度打合せをして追加資料を預かったり,事情をうかがって,事務所に持ち帰って改めて整理を進める。
というやり方をとることが多いです。
 書類が一番ありそうな場所に行って打合せをするのは,打合せで事情をうかがったり資料を見たりするなかで新たに必要そうな資料を思いつくことがあるので,その資料がその場にあれば即刻お預りすることができ,大変はかどるからです。
 打合せが終わるときに次の打合せ日程を入れておくと,お互いに直近でやるべきこととその期限が明確なまま進んでいくように思います。
 申立てに法的な期限はありませんが,申立までの時間が長くなればなるほど問題が生じる可能性が高まりますので(この点はまた追って説明したいと思います。),意欲的に進めていく必要があります

 

3 会社社長等の生活

 

 会社が営業を停止したことで,会社社長・役員らは会社からの収入が得られないことになります(実際は営業停止のもっと前から役員報酬などもらっていないという方も多くおられます)。
 ここで,社長から,「会社の現預金から当面の自分の生活費を拠出して良いか。」と問われることもありますが,答えはダメです。
 破産申立ての準備に入った以上,会社のお金は債権者のために適切に管理して破産管財人に引き継がなければならないという意識を持たなければならないからです。
 ですので,社長には,働ける状態にあるならば,早く次の就職先を見つけて生活基盤を整えてくださいと説明しています。これまでご自身で差配してきた会社の財産をいきなり自由に使うなと言われて気分が良いわけはありませんが,それが破産ですというしかありません。
 そうであれば弁護士に依頼する前に預金から引き出して生活費として持っておくという手法はどうかというところですが,これも,最低過去1年のお金の動きはチェックされ,使途がわからない引出しについては事情の報告を求められます。説明に窮すればその返還を求められるほか,詐欺破産罪で刑事手続に発展していくということにもなりかねません。
 役員・経理担当の方も,社長の親族などで会社破産の準備に協力してくださる方もいます。それはそれで大変ありがたいのですが,基本的には会社から給与・報酬を出すことが難しい状況にありますから,次の職場に進んでいただくことをお勧めし,協力は可能な範囲でお願いすることとしています。

 

4 会社財産の取扱い
   

 申立準備で重要なことは,破産手続開始後に破産管財人が調査・活動しやすい資料を揃えることです。
 申立てに必要な一般的な書類は裁判所から情報開示がなされていますので,その一般的な資料に加え,事案に応じて必要な書類を付加し,さらに資料が不足する部分については代理人が報告書にて事情の説明を施して申立てを行うのが一般的です。
会社資産は,破産手続開始後に破産管財人が債権者の納得する方法で換価するというのが建前となっているので,申立前に処分をすべき法的な要請があると考えられる場合や,処分をすべき特別な事情がある場合(これらの点は次回説明します。)を除いて処分などせず,そのままにするのが基本になります。
 ときに取引先などから,会社の機材・設備を買い取りたいといった打診があることがありますが,安易に応じることは控えるべきです。債権者が代物弁済として取得したいというような場合は論外として,売買代金が現金で入る形での処分だとしても,当該処分が適正価格でなされなかった場合には当然全債権者に損害を与えていることになりますし,このために破産手続開始後に破産管財人からその売買の効力を否定され,かえって買い取った取引先にも迷惑をかける事態にもなりかねません。
 申立ての準備というのは基本的には資料を集めるということにとどめ,資料が揃ったならばすみやかに申立てをして破産管財人へ処理を引き継ぐというのがオーソドックスな処理になります。
 私も申立前の会社資産の買取の打診には,適正な取引であることを担保できる状況にない限りは,「それが適正な処分かどうか私が判断できる立場にないので。」という理由でお断りすることが多いです。

 とはいえ,申立前に処分等をすべき要請があると考えられるもの,申立人側の都合で申立をするために処分をすることもやむを得ないものもあります。

 

 次回は,申立前に資産の処分等すべき,処分等することもやむを得ないと考えられる場合や,その場合の注意点について掲載したいと思います。

会社破産の流れ① ~営業停止において重要なこと~

会社破産の流れ③ ~営業停止から申立てまでにおいて重要なこと~

会社破産の流れ④ ~申立前に財産を処分する場合の注意点~

法人整理のご相談はこちら

横浜の弁護士 横浜よつば法律税務事務所へのお問い合わせ 横浜の弁護士 横浜よつば税理士事務所

2019年4月26日会社関係