民法改正について~第1回~

2019年4月26日

 現行民法は1896年に制定されましたが,今回の改正はそれ以来の大規模なものです。施行期日は2020年(平成32年)4月1日からとされており,まだ多少の期間はありますが,重要な改正点が多く含まれますので,今から十分に予習をしておくことが望ましいと言えます。

 特に基本的で身近な改正点としては,消滅時効の点が挙げられるかと思いますので,今回はこの点について説明します。

 

 1 消滅時効について

   消滅時効は,一定期間権利を行使しないことによって,その権利が消滅する制度です。時効には,もう一つ取得時効というものもありますが,一般的に消滅時効を指して「時効」という言葉を用いることが多いです。

 2 短期消滅時効の廃止

 現行民法の消滅時効期間は,原則として10年とされています。そして,この期間をいつから数えるのかというスタート地点を起算点と言い,これを「権利を行使できる時から」と定めています。原則はこうなのですが,現行民法では,1年~3年で消滅する短期消滅時効というものも存在します。

 今回の改正では,この短期消滅時効が廃止され,全ての債権について,①権利を行使できる時から10年という消滅時効期間に統一されます。

 そして,新たに,起算点を②権利を行使できることを「知った時から」5年という消滅時効を追加しており,①か②のいずれか早い方の経過によって消滅するとしています。

 3 生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間の特則

 例えば,交通事故でけがをした場合の被害者による損害賠償請求については,現行民法では「損害及び加害者を知った時」から3年の経過で消滅時効が成立します。また,消滅時効とは似て非なる制度として,除斥期間というものがあり,不法行為の時(交通事故の場合,事故発生時)から20年の経過をもって,権利が消滅してしまいます。消滅時効との違いとして,消滅時効の場合は債務者等の主張(援用)によってはじめて,その効果が認められるのに対し,除斥期間は債務者等の援用は不要で,期間の経過により,当然にその効果が発生します。そして,消滅時効の場合は,次項で触れる中断や停止という権利保全の手段があるのに対し,除斥期間にはこれらがありません。

 少し話が逸れましたが,今回の改正では,不法行為に関する20年の期間制限が解釈により除斥期間とされていたのを,消滅時効であると明文化しています。

 また,不法行為のうち,生命・身体の侵害による損害賠償請求権について,損害及び加害者を知った時から5年に時効期間を延長しています。

 そして,債務不履行責任に基づく損害賠償請求のうち,生命・身体の侵害によるもの(例えば,安全配慮義務違反により傷害を負った場合)についても,同様の時効期間の特則が新設されています。

 4 時効の中断・停止の概念の整理

 時効の「中断」とは,法律で定められた事由があった場合,既に経過した時効期間がリセットされ,新たに一から時効期間が進行するもので,時効の「停止」は,時効の完成が近づいているが,時効中断をすることに障害がある場合に,一定期間時効の完成を猶予するものです。

 今回の改正では,完成猶予事由(現行民法の「停止」の効果)と更新事由(現行民法の「中断」の効果)という概念を用いて,具体的な事由に応じて,いずれの効果が発生するのか見直しをしています。

 まず,現行民法の中断事由である「承認」は,今回の改正では更新事由とされ,時効のリセットの効果が与えられています(結論としては,これまでと同様です。)。

 同じく現行民法の中断事由の一つである「裁判上の請求」については,訴え提起後に時効期間が満了する場合には,裁判確定まで完成猶予とし,裁判確定後は新たに時効が進行することとして,双方の効果が与えられています。

 そして,「催告」(権利行使の通知)については,催告後に時効期間が満了する場合に,それから6か月の完成猶予の効果が与えられています。

 更に,裁判上の催告(訴えを取り下げた場合,時効が中断しなかったことになるが,催告の効果は認め,取下げから6か月は時効完成が猶予されるという判例解釈)も明文化されることになりました。

 なお,現行民法の時効停止事由は全て完成猶予事由とされています(ここも結論としては,これまでと同様です。)

 もう一つの時効の「停止」についての改正点としては,現行民法では,天災等による場合,その障害が消滅してから2週間しか時効完成が猶予されていませんが,これが3か月に延長されています。また,現行民法では,当事者で協議を継続中であっても,時効完成が近づけば,完成を避けるために訴訟提起をしなければなりませんが,改正によって,当事者間で「権利について協議を行う旨の合意」が書面又は電磁的記録によってなされた場合を,新たに完成猶予事由としています。

 

 以上,消滅時効に関する改正点を説明しましたが,今回の改正は多岐の点に亘りますので,他の改正点については改めて説明をしたいと思います。

 

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2019年4月26日民法改正