民法改正について~第3回~「法定利率」
民法改正についての記事も3回めとなりました。今回は法定利率に関する改正点について説明したいと思います。
1 法定利率が問題になる場面
あなたが友人から10万円を借りたとします。その際,返済にあたり期限までの利息を支払うこととしましたが,具体的な利率を決めなかった場合,民法所定の法定利率が適用されることになります(なお,利息を支払う約束をしなかった場合は,無利息の金銭消費貸借契約となります。)もちろん,契約自由の原則により,法定利率より高い利率を定めることも(利息制限法や出資法の適用はありえますが),反対に低い利率を定めることも自由です。
また,交通事故による損害賠償請求権は,事故発生時から遅延損害金が発生しますが,これも法定利率に基づいて算定することになります。
現行民法の法定利率は年5パーセントですが,これは明治時代の市場金利を前提に定められたもので,「超低金利時代」と言われる現代社会にそぐわないことが指摘されていました。
2 法定利率の引下げと変動制の導入
そこで,改正民法では,まず施行時に年3パーセントに法定利率を引き下げ,その後,3年を「1期」とし「1期」ごとに1パーセントずつ法定利率の変動しうる変動制を導入しています。利率の変動にあたっては,日本銀行が公表している「貸出約定平均金利」(銀行や信用金庫が個人や企業に貸付を行う際の金利を平均したもの)を使って算出します。
なお,1つの債権については1つ法定利率が適用されますので,途中で法定利率が変動することはありません。先ほどの例で言えば,貸金については最初に利息が発生した時,交通事故では,事故時の法定利率で固定されます。
実務的には,契約時に具体的な利率を定めないことは考え難いので,現実的には交通事故事件への影響が大きいと思われます。交通事故に関しては,損害賠償額を算定するにあたり中間利息控除を行う場合がありますが(中間利息控除自体の説明は省略します。),中間利息控除にも法定利率を用いるので,その点でも法定利率に関する改正は,交通事故事件への影響が大きいと言えます。
3 商事法定利率の廃止
かかる民法改正に伴い,商法の商事法定利率に関する規定が削除され,商行為によって生じた債務についても,民法と同じ法定利率が適用されます。
2020年4月1日の改正民法の施行まで2年を切りました。他にも重要な改正点がありますので,引き続き改正情報をお知らせしていきます。
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